VOL.53 人と人、国と国、平和的関係を大切に育てる

2017/09/20

ことし7月、4年に一度の世界大会と国際講習会がカリフォルニア州サンマテオで開かれました。40か国に普及する中、22か国からの大会出場者と講習会受講者が集いました。

国や宗教や言語、そして習慣の違う人たちが、合掌礼一つで仲間と認識し、自身を高めようと技を掛け合い、熱心に講義を聞く姿は、昨今の世界情勢とはまったく異次元の崇高にさえ感じる光のある光景でした。

自分の満足のために力を身につけるのか。人の役に立つために力を身につけるのか。この後者のために生まれた少林寺拳法は、組手主体で人と協力しながら修練を積み重ね、技の習得とともに人間関係も築き上げていきます。

人は、時間をかけ大切に育てたものや、苦労して手に入れたものは大切にします。しかし、簡単に手に入れたものや、あって当たり前と思っているものは、意外に粗末に扱ったりするのではないでしょうか。人と人の関係も、国と国の関係も、そう思えてなりません。

ことしは日中国交正常化45周年の年です。1950年代から国交回復のために幾多の先輩方が努力に努力を重ね、72年当時の田中角栄総理と大平正芳外務大臣が北京を訪問し、毛沢東主席・周恩来総理と会談し、難産のような外交努力によってやっと成しえた東アジアの夜明けでした。

しかし、昨今では戦争経験者が少なくなり、語り継がれない歴史の教訓と同じように、国交正常化に尽くした先人たちの努力は語られることはなくなり、身近に起こる政治外交上の問題だけがクローズアップされ、「国益」という言葉だけが飛び交っているように思います。

政治外交を司る方々のすべきことと、私たち民間のすべきことは同じではありません。政治外交上うまくいかない時代を民間が支え、人間関係を紡いできた歴史もあります。

少林寺拳法創始者・宗道臣(開祖)は、「日中の友好なくしてアジアの平和はありえず、アジアの平和なくして世界の平和はありえない」という信念を持って、その意志を継ぐ次世代を育てようとしました。

しかし最近になって、「開祖はそういったかもしれないけれど、もはや中国は経済大国であり、そして軍事大国になろうとしている。変わってしまったのだから、もう日中友好なんていっている時代じゃない」という人がいます。私はそうは思いません。「国益」ばかりでなく、平和を願う人々との交流、特に民間交流は絶対に必要だと思うからです。だからこそ、昨年は高校生60名を、ことしは大学生60名を連れて中国を訪問しました。次世代に伝えたいからです。

大変な努力をしてやっと手に入れた平和的関係を、粗末に扱ってはいけない。いつまでも大切に育てていかなければなりません。

争いの世紀といわれた20世紀が終わり、核廃絶を目指し動き出したはずの21世紀も、また核の抑止力に頼る自国ファーストの応酬が始まっています。

日本の将来をイメージし、人と人との関係を紡ぐ方法や努力を伝えるという大切な教育を怠った、その結果ではないでしょうか。